防犯カメラならば、ハッキングで干渉可能だが、タイムロックはアナログ制御だ。単純明快に強固な密室に、犯人はどうやって侵入したのか?

論理的な答えは出なかった。

瞬間移動…

あり得ないが、そこに考えが及んでしまう。

犯人はいったい、どんなマジックを使ったのか…

『唯一の証拠が毛髪だ。虎ノ門と西新橋の金庫室から、金庫室に入れる全ての人間のDNAと異なる毛髪が採取されている。唯一の手がかりだ』

三枝は、黒沢の顔を見ずに言った。

『容疑者が判明しない限り無意味ですね…』

黒沢は冷たく返したが、確かに犯人の毛髪である可能性は高い。

そして、DNAからは、犯人像をある程度までは解析出来る

性別や血液型までは判断可能だ。

犯人は男でA型

いずれにしても、雲を掴むような捜査になる事は間違いない。

『再犯の可能性は充分に考えられる。何しろ犯人は、同じ銀行でも複数回犯行に及んでいるからな。目下都心の銀行は全て厳重な体制で監視をしているが、最初の犯行があった11月25日、犯行は連日数カ所の銀行で行われ、29日以降の被害は皆無だ。なんせ最初の銀行から被害届けが入ったのが28日だからな!』

三枝は忌々し気に吐き捨てた。