桐山はパジャマと下着を脱いで全裸になった。鏡に桐山は映らない。

(完璧だ…)

桐山は、そのままで瞬間移動を試す事にした。

(何処へ行くか?)
桐山は閃いた。空腹が助けたのかも知れない。桐山は、近所の国道に面しているファミレスを行き先に決めた。ファミレスをイメージしてみると、なんとファミレスの情景がビジョンとして頭に現れた。店員や客もいた。ハッキリと見える。しかもそのビジョンは、ファミレスの屋根を取り去り、真上から見ているような映像であった。

よく見ると、赤い照準が、視点と一緒に動いている。桐山は直感的に、店員や客の導線になりづらい場所を選び、照準を頭で決定してから念じてみた。

次の瞬間、桐山は自分が指定した位置に立っていた。

誰にも桐山は見えない。

すぐ近くに、出勤前らしきOLが食事をしていた。

桐山は恐る恐る近寄り、女の正面に立った。女は関知していない。桐山は有頂天になり、一瞬だけ口笛を吹いてみた。

女が動きを止めて、当たりを怪訝な表情で見渡したが、桐山は見えていない。

女が再び食事を始めた。

また口笛を吹いた。
女が固まる。