猫カフェを満喫した俺らは、近くのショップを見て廻ることにした。

「あの」
「先輩っ」

時折話しかけるタイミングが同じで、思わず顔を見合わせくすっと笑う。

「何ですか、先輩」
「津田くん、お先にどうぞ」
「いえ、先輩からで」
「……じゃあ」

明らかにぎこちないのに、この何とも言えない空気感がいい。
お互いに意識している証拠だし、俺の隣りに先輩がいるという事実が何よりも嬉しい。

「あのね」
「……はい」
「津田くん、ゲン担ぎとか信じる方?」
「え?……あ~まぁ、それなりに、っすかね」
「それなり?」
「あまりそれ自体に拘ってるってことも無いんすけど、大事にしてるものはあります」
「それ、私もあやかれる?」
「へ?」
「実はね、明日明後日と、推薦入試の試験があるの」
「はっ?!」
「志望する大学の医学部の枠なんだけど、正確には歯学部共通で1枠、うちの学校の推薦枠があってね。それを受けるんだけど」
「いやいやいやいや、試験が明日なのに、こんなとこで遊んでちゃダメでしょ!」
「……そうなのかな」

はにかむように笑った先輩は、ゆっくりと視線を持ち上げた。

「明日は小論文で、明後日に面接があるの。勿論、センター試験は受けないとならないんだけど、一般入試だけだと不安だし、保険的な意味合いで受けるんだけどね」
「……」

医学部のことなんて俺には分からない。
だけど、例え推薦入試とはいえ、前日にこんな風に街をふらふらしてたらダメでしょ。

風邪引いたらどうするの?
事故にでも遭ったらどうするの?

度胸が据わってるのか、緊張という概念がないのか。