「受験終わるまで待っててくれるだなんて、いい男じゃん」
「雫一筋なんだろうねぇ」
「じゃあ、この話しても大丈夫かな…」
「……ん?」

咲良はペットボトルのお茶を口にしながら、振り返った。

「このところ3日間、毎日告白されてるっぽいよ、津田くん」
「へっ」
「うわぁ、それは凄いね」
「バレー部の女の子が、毎日のように手作りお菓子を用意して、南棟のテラスに来る時に声をかけてるって」
「それで?津田くんはなんて?」
「そりゃあ、雫にぞっこんだもん、速攻で断ってるみたいだけど」
「……そうなんだ」
「そのバレー部の子ってのがさ、結構しつこい系らしいの。狙った獲物は逃がさない的な?」
「怖っ……」
「どうする?雫は何もしなくていいの?」
「何もしなくてって、私が何かしなくちゃいけないことがある?」
「私の彼氏なんで、近づかないで!とか?」
「……彼氏でもなんでもないじゃない」
「だからさ~、いっそのこと、付き合ったらいいじゃない」
「……」
「付き合ったとしてもさ、雫は勉強優先、津田くんは空手優先。暫くはお昼ご飯とたまーにデートしたりする程度で十分じゃない?」
「そんな都合のいい付き合い方だなんて、ある?」
「あるある!!」
「もちろん、あるって!」

そもそも、彼が本気かどうかすら怪しい。
憧れだった人物と再会して、夢の中の人を追いかけてるんじゃないだろうか?

ずっと好きだった俳優が、偶然仕事先で出くわした!みたいな……。
あり得ない状況の連続だから、脳内が整理できてないだけで。

現実を把握したら、一瞬で目が覚めそうだけど。