「ゆうまただいま〜」
内風呂から上がってきたきょう姉がベランダに戻ってきた。
露天風呂の時と違って、お化粧も落としていて洗った髪の毛を綺麗にまとめている。

「・・・」

「…ゆうま?」

「あっ!きょう姉おかえりなさい」

「どーしたの??」

「ううん、なんでもないよー」
「ただ、まったりしていただけ!」

「…そっか!」
「次、ゆうまも内風呂行ってくれば〜!めっちゃよかったよ!!」

なにかを感じ取ったのか、僕の顔と声を聞いたきょう姉はそれ以上追求してこなかった。

「あっうん!じゃあお風呂してくるよ〜!」
「きょう姉はまったりしててー」

「は〜い!いってらっしゃい〜」

ガラガラっバタン

笑顔のきょう姉をあとに内風呂に向かった。


バサバサっ
チャプン

…ちょっと申し訳なく感じた。
さっきのきょう姉はなにか分かっていそうな表情をしていた。
きょう姉自身、離婚もあって色々あったと思う。
だからこそ性別は違うけど、近しい状況になっている僕と当時のきょう姉が重なったのかもって。

どんな理由で離婚になったのかは知らないし、どんな話し合いをして離婚の道を選んだのかも分からない。

だけど・・・

「…きょう姉は後悔したとかあるのかな。。こうしておけばよかったとか、こんな話をしておけばよかったとか。。。」
湯船で1人小さな声で口にした。

…僕はどうしたいのか。
あの時別れたいって言った時の気持ちは確かだったし、このままだと自分がおかしくなるって感じた。
一緒にいるのが当たり前だったし、普通だったけど、あれ以降はるかに対する気持ちが全くなくなっている。
これまではるかに対してやっていた事が全て無意味にも感じるくらい。。

だけど、あのベランダで、そのあとのソファーで話したこと。
あれは・・・あぁするしかなかったのか?

別れる決断をするってどんなことか想像していたけど・・・
結局答えを引き伸ばして自分が傷づかないようにしただけだったのかな。

「・・・」

バシャン!

堂々巡りになっている頭を切り替えるために湯船のお湯をすくい顔を洗った。

「さっ身体洗って部屋に戻ろ!」




部屋に戻ると、きょう姉がベランダから戻っていた。

「ゆうまおかえり〜」

「ただいま」

「すごい長かったけど、のぼせてない?(笑)」

「えっ!そんなにだったかな??」

「そうだよ!1時間くらい入ってた(笑)」
「長風呂好きなの〜?」

「あ〜そんなにか(笑)」
「まぁ、良いところのお風呂だしね!」
普段長風呂はしたことがないが、そう答えた。

「そっか」
「でも、もう眠くなってきちゃったよ〜」

「あっごめんね」
時計を見えると24時を過ぎていた。

「くぅ〜!」
両腕を伸ばし背伸びしたきょう姉。

「私は、もうベットで先にまったりしてる〜」

「あっわかった〜」
「時間も時間だし、きょう姉無理せずに先に寝てていいからね!」

「うふふ(笑)は〜い」

そうゆうきょう姉はスマホを持ってベッドに向かった。

「ふぅ、僕も寝る前の支度するか」
一通りの事をしてお水を飲み20分後くらいにベッドに向かった。


スゥ〜

ふすまを開けると、きょう姉がスマホをいじってまだ起きていた。

「きょう姉まだ起きてたんだ〜!」

「うん〜」

「眠くないの〜?」

「眠くなってきたかな〜・・でも、今いいところなの〜!」

「いいところ??」
隣にあるベッドに入りながら聞き返した。

「そう〜私ねカクヨミってサイトで小説を読むのが好きでさ〜」
「いま読んでいる恋愛小説がすごいいいところなの!(笑)」

「小説なんか読んだことないや(笑)」
「なんか大人な感じ」

「そんなことないよ〜」
「でも、漫画よりは好きかな〜」
「こう・・色々想像が出来たりするしね(笑)」

「そうゆうものなのか〜?(笑)」



それから15分くらいきょう姉が読んでいる恋愛小説の話を聞きながらゆる〜くお話をした。

「はぁ〜・・・・もう眠いやzzz」

「僕もだzzz」

「・・なんか寝る前に人と話すなんて懐かしいや(笑)」

「あっ僕もだ(笑)」

「うふふ(笑)だよね〜」

「・・・」

「・・・」

少し沈黙があった。

「じゃあ、寝ようか」

「うん、だね」

「おやすみなさい〜」

「うん、おやすみなさ〜い」

おやすみと同時にゆうまが左手を横に伸ばした。
バサッ

「ん??ゆうまどうしたの?」

「ん?あっいやなんでもない」

「変なゆうま〜(笑)」

「ほら寝るよ〜」

「うんごめん、また明日ね」





それから10分くらいできょう姉の寝息が聞こえてきた。

「・・・」

ゆうまが左手を見る。

さっきの動作・・・
あれもいつもの癖。

寝る時はいつも同じベッドで隣で寝ていた。
そして「おやすみ」を交したあとに必ずやることがある。
はるかのおへその下辺りに手をかざすこと。

おへその下には丹田と呼ばれるところがあり、健康など色んな面で大事な場所と言われているらしい。
明確な根拠はないけど、ここを温めてあげることで心配性のはるかを安心させるためにいつも手を置いていた。

その癖が出た。

「・・・」

あのキッカケ以降で感じたことのない感情を自分の中で感じた。

これが内緒で旅行にきた事による罪悪感なのか。
10年も同棲してきたはるかに対する情なのか。
はるかの事がやっぱり好きだからなのか。
わからない。

けど、はるかの事を思った。
そして少しはるかに会いたくなった。


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