「はーい、楓くんの勝ち。優李ちゃんの負け~」

「楓にも負けるとか悔しい!」

「楓くん、スピードやるの初めて?」

「はい」

「だとしたら、超上手だね」

「恐れ入ります」

「逆に優李ちゃん、超遅い」

「うるさい!初めてだったらこんなもんでしょ。楓がちょっとできただけじゃん」

「ふふっ、小夜、結果発表して」

「承知しました。只今のトーナメント戦の結果、1位琉偉様。
2位は僭越ながら私が取らせていただき、3位楓さん、そして最下位は優李様でございます」

く・・・悔しい。

さっきから色んなゲームをしてきたけど、ずっと3位と最下位の間を彷徨っている。

私は本来の目的を忘れて、初めてやるゲームに夢中になっていた。

「では、琉偉様。優李様への罰ゲームは何にされますか?」

「あの、モノマネはもう勘弁を・・・」

「え~、優李ちゃんのモノマネ下手過ぎて面白いのに」

「くっ・・・」

「しょうがないな~。じゃあ・・・そうだ、小夜。あれ持ってきて」

あれ?

「承知しました」

何をやらされるのかとビクビクして待っていると、何やら丸い機械を持って戻ってきた。

「じゃじゃ~ん。嘘発見器!これで優李ちゃんの秘密暴いちゃおう」

「胡散臭~」

よかった。
どんな辱めを受けることになるのかと思ったが、こんなおもちゃで何か分かるはずがない。

「こんな見た目だけど、精度は超高いからね。僕らが実証済みだから。ほら、早く機械装着して」

私は言われたとおり、機械を手に装着し、琉偉からの質問を待つ。

「じゃあ、僕が今から3つ質問するから正直に答えてね。
嘘ついたら本体が赤く光ってビィーって音鳴るから。分かった?」

「はいはい」

「じゃあ、まずは定番の・・・好きな人はいますか?」

ドクンッ。

その質問に、さっきまでの余裕が一気になくなった。

大丈夫、ただのおもちゃだから。

「いいえ」

ビィー!ビィー!

「はい、嘘~。好きな人がいるなら正直に答えないとダメじゃん」

「違っ・・・」

「はい、じゃあ次の質問。その人とキスはしましたか?」

楓とのあの日のことを思い浮かべてしまい、体温が上がって嫌な汗が出てくる。

「い、いいえ・・・」

ビィー!ビィー!

再び赤いランプを光らせながら、私の嘘を耳障りな音で知らせる。

「へぇ~、キスしたんだぁ」

恥ずかしくて顔を上げれないけど、意地悪い笑みを浮かべた琉偉が容易に想像できる。

こんなことなら、モノマネの方が何倍もマシだった。

「どんなキスだった?もしかして、ファースト・・・」

「琉偉様。少々悪ふざけが過ぎるかと」

楓・・・。

楓は今、どんな顔をしてるんだろう。

「そうだね、ごめんごめん。じゃあ、最後の質問」

これで、最後・・・。

「その相手は楓くんですか?」

体中の血の気が引いていくのを感じた。

なんでそんなこと・・・。

「そんな訳ないでしょ!」

ビィー!ビィー!

動揺する私を嘲笑うかのように、機械音が鳴り響く。

「もう、うるさい!」

パリンッ!

「あっ・・・」

感情が昂ぶり、制御できなくなった力のせいで、窓ガラスが割れてしまった。

「ごめんなさい・・・」

重苦しい空気に耐え切れず、その場を後にし、用意された客人用の部屋に逃げ込む。