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水族館に行った日、マンションまで光生さんは送り届けてくれて、ご両親に挨拶したいが止めておくと帰っていった。

光生さんからの直筆の手紙攻撃は、私が止めてくれるようにお願いした。
仕事の負担になるのは避けたいからと。
そうすると交換条件でメールすることになった。

負担が無いようにか、おはようか行ってきますとかお帰りなさいとかお休みとか、そういう簡単なやりとりだけ。
二三往復するだけで終えるようになっているので負担では無い。
むしろ光生さんの生存確認が出来るようでホッとしている面がある。

しばらくは試験勉強と試験で忙殺されていたが、終わって現実に戻る。
返答期限までもう一週間くらいしかない。
明日は終業式、最後の委員会を終え、皆がバタバタ席を立つのをよそ目にぼんやりしながら鞄に荷物を詰めていた。


「川井さん」


顔を上げると横山君が笑顔で私を見下ろしている。


「もうみんな帰ったよ」


えっ、と周囲を見れば私達以外誰もいなかった。てっきりまだみんな帰る準備中と思っていたが、どれだけぼんやりしながらいたのだろう。