「いや、嫉妬されて良い気分になったのは初めてだ」

「良い気分じゃ無くて単にウケてただけですよね？
それにそもそもなんで嫉妬になるんですか」

「そりゃ、俺と交際してた女を考えて比べてるんだ、そういう事だろうが」


はは、とまだ笑いが止まらないのか口元に手を当て話す光生さんを見ながら、自分の頭には疑問しかない。
私の発言のどこにそういう要素があったのか、それとも私のレベルが低すぎてわかってないだけなのだろうか。

わからない、と思っているのを見抜いているように光生さんが覗き込んで笑う。


「別に深く考えなくて良い。俺が勝手に満足しているだけだ」


そう言うと優しい目の視線を私から前に向けた。

今日、光生さんも楽しんで欲しいなと思った、純粋に。
光生さんには私の知らない学生時代があって、私には想像も出来ない立場と仕事を背負っている。

そういう人に笑って欲しいと思うことは、恋じゃ無くて愛情じゃ無いだろうか。
今の自分の感情がどういう分類になるのか答えが出ない。


「まだ時間はある。今すぐここで答えなくて良い」


私に視線を向けないまま、静かな声が聞こえた。

期限まであと一ヶ月くらい。
ようは私の誕生日が迫っている。

その時、私はこの人と一緒に居るのだろうか、それとももう二度と会わないと言うことになるのだろうか。

はるかに年上の隣に座る人を横目で少しだけ見ると、私の胸の中にはなんとも言えないものが入った箱がある気がして、それを見たくないと私は目を閉じた。