「やはりアクリル板だな。この水圧に耐えるために相当板を重ねているんだろうがそれでこの透明度、職人技だ」

「見てる視点が光生さんらしい。
やっぱり仕事目線を消すのは無理そうですね」

「悪かったな」


ふてくされたような顔に思わず吹き出す。
やはりこの人から仕事を考える時間を無くすのは無理なのだろう。


「で、そこに興味持ったのはなんでですか?」


私がニヤニヤと見上げながら先を促せば、面白く無さそうな顔をしつつ話し出した。


「この頃は商業施設に大きな水槽置きたいってリクエストもあるんだよ。
日本でもいくつかあるが、世界で言えばドバイモールにあるアクアリウムだな。
壁面の巨大水槽は一般の買い物客が歩くモール側にも見えるから無料で見られる。
あれは圧巻だった」

「行ったことあるんですか?」

「ドバイか?そりゃあるよ。
まぁ海外はほぼ仕事で行ってるだけだが、大体相手先や地元企業がサービスで観光に連れ出すんだよ」

「いいなぁ、海外行ったこと無いので羨ましい」

「俺と結婚すれば世界一周の船旅も出来るが」

「嫌ですよ、長期間二人、それも喧嘩したって逃げ場が無いとことか」

「喧嘩前提か、そりゃそうか」


ははっ、と楽しげに笑う光生さんにため息をつく。どこまで本気なのやら。