手を・・・・・・おそらく大丈夫。

キスは・・・・・・。想像できなかった。

良い雰囲気というのがそもそも想像しにくく、あの光生さんと、漫画かドラマで出てくるようなロマンティックな雰囲気に流れていくことすら想像しにくい。
自然と眉間に皺が寄り考え込んでしまう。

前から笑い声が聞こえて、知らずに俯いていた顔を上げると、桃が片肘を突いて顎を乗せ、楽しげな顔を向けてくる。


「想像できない?」

「うん・・・・・・」


桃の質問に力なく答える。
だって想像できないのだから。


「じゃぁ、その彼に触りたいなとか、ドキドキするな、とか切ないとかモヤモヤした気持ちになる、とかは?」


今度は違うチェック方法らしい。
考えつつ、触りたいなと思った事は無いし、ドキドキする事も一応あったけれどイライラしていた記憶の方が強い。

ただ、モヤモヤした、というのだけは一つだけ特に心当たりがあった。
テレビでのインタビューを見たとき、おそらく光生さんは誰か女性のことを言っているのだろうと思いつつも、仕事真面目な人だから仕事に関係ある人間と自分に言い聞かせた。

だけれど、出来る女性なのか、今光生さんはその人のことを考えているのかと思うと心の中がモヤモヤとした。
ただこれは恋とかいうものなのだろうか。