「はやく戻るんだ。戻って二人を救うのだ」

 お父様は、わたしの顔を見るなり言った。

 二人というのは、お義母(かあ)様とお義姉(ねえ)様のことらしい。

 てっきり愚か者の元婚約者の使いで来たのかと思った。

「ふんっ。あれはもう終わりだ。いまごろ牢獄で飢えているだろうよ。あの愚か者がすべての元凶だ。自滅してくれればよかったものを、クリスタルまで巻き込みおって。そのせいでポーリーンまでつかまってしまった。ラン、おまえこそが愚か者のほんとうの婚約者。おまえが戻れば、クリスタルとポーリーンが釈放される。ほら、さっさとしないか」

 開いた口がふさがらなかった。悲しくはない。すでに諦めているから。それでも、情けなさで涙が出そうになった。