「全く!あなた達は!」
 腕組みしたアリスの大目玉がガミガミ上から降ってくる。
 まさか、本の世界で地べたに正座させられることになるなんて。
「そこ! 話聞いてる!?」
「は、はい!」
 ……耳よりも足が痛い。
「大体、なんで『説明がてらちょっとそのあたりを観光』しに行って、戦闘区のド真ん中で分厚い弾幕を受けてるのよ!」
 同じ内容が、早くも五回目を数えようとしていた。
「ハハハッ。まぁまぁ、アリス。怒ると可愛い顔が台無しだぜ?」
 そして、反省の色が全く感じられないこのピーターの台詞も、同じく五回目。
 そろそろこんな押し問答に飽きたのか、藍が間に仲裁に入ってきた。
「聞き飽きた。やるなら別な台詞で好きなだけ続けてくれ」
 ……いや、止めろよ。
 あと出来ればボクの、馴れない正座をしている足の事も少しだけ考えて欲しい!
 そこまでして説教するつもりはないのか、アリスは不満そうな顔をしながらもガミガミタイムを終わらせた。
 もっとも、年をとらないらしい本の世界の住人にとって、時間や回数といった僕らの世界でいう“数”の概念はあまり気にするものじゃないようで、放っとくとずーっと同じ事を話してるらしいが。
「もうっ」
 膨れ面のアリスは、金色の髪をなびかせてそっぽを向くも、その可憐な顔つきとちょっとした仕草は絵になる。
 女のボクが、思わず見とれるくらいには。
 藍がアリスの隣に腰を下ろしながら「まあまあ」と切り出す。
「とりあえず足は崩していい。で、状況と作戦を説明する。オーライ?」
「オーラぃっひゃわぁ!!」
 間抜けな絶叫と悶絶。涙が出る。両足を稲妻が駆け巡る。
「……」
 ああ……ボクを見る皆の視線が痛い……。
「……オーライか?」
「All right……」