花は空気でも読むかのように黙って,小さくなった。
思った通り,こいつは僕の言うことに疑問や反発を口にしない。
ただ素直に,人間のようにただの頼みを聞く。
「タルト,こいつについてはまた明日からの道中で少しずつ話す。こいつは思ったより複雑で,思ったよりシンプルな存在だ」
だからこそ,理解に戸惑う。
発端は全てこいつではなく,これを利用しようと画策した人間ではないのかと思えるから。
僕の主観でどこまで伝えていいのか,分からない。
けれど,1度に話してしまうべきではないとは思う。
タルトにとっては,きっとそう身近なものではないから。
「でも……僕の心内を,少しだけ聞いてくれ」
張詰めていた気が限界に達し,今さらやってきた睡魔。
体調管理の怠りによる,気の滅入り。
そんな僕の小さな声に,タルトは力強く頷いた。