粉で増えないなら,花は選んで人につくんだろ?
なのに,分からない?
それどころか,食欲があったわけでもなく入れられただと?
「わたくしちゃま,ととさま忘れたくなくて,6輪一人立ちしてからずっと寝てた。そしたら,なんか動けなくて,いいかって寝てて。そしたら,急に押し込まれて,また寝た。寝てる間に何人か叩いたりしたくらいしか,おぼえてない」
それから僕は,タルトが戻るまで黙っていた。
長い時間,ずっと。
その間突然黙った僕に,花は声をかけたりつついたりしたけれど。
黙っててくれと少し言えば,素直に従った。
人間が,僕のこの花を長い間保管していた。
その花を,わざわざ僕に植え付けた。
誰が,何のために。
僕が知っている人間なんて,そう多くはなかった。
だけど,子供の頃合わせた顔なんて少しも浮かばなかった。
持て余す感情に苛立ちを憶えながらも,必死に頭を動かす。
堂々巡りになると分かっていても,そうするしかなかった。
消えていったいくつもの命が頭に浮かぶ。
各地での花による被害も同時にイメージとして流れた。
僕は……何を信じればいい?
最初に浮かんだのは,今は亡きおじいさまの顔だった。