一度振り返ったタルト。
僕は早く行けと片手で示し,タルトを前へ進ませる。
タルトの背が離れたのを確認し,念のため随分経ったあとになって,僕は口を開いた。
「僕はじおんじゃない。ジョンだ。ジョセフィーネ=マリア·エレクトロ。お前は? 花やらお前達だら呼びにくい。何と呼ばれたい」
僕は花に移動手段があると知っても,自分のそれに名前があるなんて考えもしなかった。
そんな僕に,花は考えるようにしんとなる。
「なんだ? どうした。適当に決めろ」
花に表情はない。
こちらが見えているようではあるものの,僕たちが確認できるような目もついてない。
動きと声でしか伝えてこない花がしんと両方止めてしまっては,僕には何も分からなかった。
花は細々とした声で言い始める。