「……いや,違わない。……悪いな,タルト」
タルトは黙って片手をあげる。
タルトの言う通り,花が3言以上話し始めた時点で僕は1人になりたかった。
花からの情報を,より正確にまとめたかったからだ。
それには僕1人であるのが最も正しい選択であるし,助かると思っていた。
こういった場合には,きっと他の人間は少ないほどいい。
他の人間のどんな思考が,どんな結果を招くか分からないから。
イレギュラーを体験するのは,1人でいいんだ。
収拾がつく範囲に,どうにか修めていなくてはいけないのだから。
「うーん? たると……? たると! もしかして,おいしい? あまいなの? ねぇじおん,たるとは殺してもいい?」
するすると茎が延び。
挙手でもするように僕の首へ巻き付いたあと,頬に触れた。
相手は言葉を発するだけの花だと,僕は感情を抑える。