王は,半年に一度の血液検査,直近は2ヶ月前のもので変化があったと,そう説明した。

……宰相?



「……全て飲み込んだとして。僕に人を殺せと言うのか? 散々僕を蝕むこの花を使って?」



人が死ねば,花はそのうち知らぬまに消える。

死体からも,数日はどんな防具も関係なく感染するため,花がどうなるのか確認したものはいない。

けれど,その逆,花が死んだ場合にも人が死ぬと言うのは古くから提唱される説だった。

絶対防御の花が人間より先に朽ちるなど,検証しようもないけれど。



「御座なりに言うとそうなってしまうな。けれど,そうして救えるものがある。感染は初めて止まるやもしれないし,死ねない辛さとやらは……お前もよく知っているであろう?」



僕はメガネを直すふりをしながら,その下で冷たく王を嗤った。



「僕を本当に外へ出すのか? そこにほんとに根拠はあるのか? その依頼はいつまでだ?」

「2件。どれほどかと言われれば,それはお前次第だな。まあ……何事もなければ数ヵ月もかからないだろう」



それだけ?

本当に?

僕を利用しようとしているのは分かっている。

まあ,この際あとのことはいい。

油断させて,後から上乗せようとしているだけかもしれないから。

なら,その前に逃げればいい。