「僕がよろけて少しぶつかった時,突然背中に花を咲かせたおじいさまは僕を襲った。既視感があると,僕は恐怖を抱いていた。おじいさまと同じことが,僕に起こったことがあると」



僕は喰われるのかと思って,震え,目を強く閉じた。

その刹那の間に見たのは,おじいさまの驚く顔だった。

きっと発現場所のせいで,自身も発病に気付いていなかったのだと思う。

そして結果がどうだったのかなんて,今の僕を見れば一目瞭然だ。



「死を覚悟したにも拘らず,僕を襲った花に反応した僕の花が,おじいさまを丸呑みにした」



僕の花がおじいさまより強かったと言うその一点だけで,僕はおじいさまの命と引き換えに生き残った。

そんな悲劇,誰も望んでいなかったのに。



「僕は今日まで,幾度も考えたことがある。おじいさまを喰らい,取り込むくらいなら,僕が喰われても構わなかったと」