目が覚めると、真紘は下着姿で手足を手錠でベッドに縛り付けられていた。


眠らせてから拘束をするなんて、アダルトビデオによくありそうな展開だ。


真紘の目が覚めたことに気付いた男はバスローブ姿で機嫌が良さそうに近づいてきた。


「一応初めましてだよな。でもどうせ旭の野郎から杉本晃には気を付けろ、とかオールバックに銀縁の眼鏡をかけた長身の男を見かけたらすぐに逃げろとでも言われてただろ?違うか?」


晃には何もかもお見通しのようだった。


部屋の中に焚かれていたあの香りのせいで頭がズキズキと痛み、反応をする余裕がない。


「この状況知ったらアイツ、どんな顔するかなァ?」


晃は真紘の上に(またが)って薄汚い笑みを浮かべながら見下ろした。


この後自分が何をされるかくらい分かっていたが、真紘は眉ひとつ動かさなかった。


晃は、この状況に全く動じない彼女が気に食わなかったようだ。


「俺の前での身の振り方は気をつけた方がいいぞ。死体になったアイツを見たくなきゃな」


「……もし旭に手を出したら、私がアンタを刑務所にぶち込んでやるから」


真紘は冷静に淡々と言い放った。


少しでも恐怖を見せた方が負けだと思った。


「いーぞいーぞ気に入った!他の女と違って絶対に俺に媚びないところがいいな。だからこそ手懐けたくなるし、ぶっ壊したくなる。その顔が後悔や悲嘆でぐちゃぐちゃに歪むところが早くみてェな」


真紘の細い首を両手で押さえつけ、興奮気味に言った。


もはやまともな精神状態ではない。


意識を失いかける(すんで)のところでようやく手が緩められた。


「ッホゲッホゴホッ」


止まらない咳に生理的な涙が流れる。