織部(おりべ)朝日(あさひ)が高校3年生になった春。


彼の父親が事業に失敗し、一家は多額の借金を抱えることになった。


旭は大学受験を控えていたし、下には妹だっていて、まだまだお金が必要だ。


払っても払っても消えない借金に、父親はもうヤクザからお金を借りるしかないと、闇金に手を出した。


そこで繋がりができてしまったがために、旭の家族はさらに負債を抱えることになる。


そして、とうとう首が回らなくなった父親を見かねてヤクザがある提案をしてきた。


『息子を組に差し出せば、借金は帳消しにする』と。


家族は当然拒否したが、冷静に考えて残された道はそれしかないことは明白だった。


実質旭は売られたようなものだが、何も強制労働や売春をやらされるわけではない。


そう思えば、自分がそうすることで家族が平穏に暮らせるなんて安いものだと考えた。


そして高校の卒業式後。


一切の繋がりを断ち、痕跡を消して、旭と家族は忽然と姿を消した。