(あさひ)は真紘が居なくなったことを確認して、彼女に手を出そうとしていた男たちに向かって静かに怒鳴った。


「てめェら、自分が何してるかわかってんのか?あ゛?」


とても20代には見えない貫禄だ。


旭に殴りかかろうとしていた者も、拳を収めたくらいだ。


「テメェは親父らが決めた休戦協定を破ったことになるが……。これがバレたらどうなると思う?」


一時期に比べ、日本のヤクザの数もうんと減った。


高齢化や後継者不足は、何も昼の世界に限ったことではない。


組の存続のため、不要な争いは極力避けるのが今の時代の流儀だ。


旭の所属する杉本組は歴史もある大所帯だから、このように休戦協定を持ちかけられることが多い。


それだけ敵に回したくない組ということだ。


そんな様々な思惑を腹に抱えながら組長同士が結んだ掟を破ることは、自分らの組長に反旗を翻したも同然なのだ。


相手方の顔がみるみる青ざめていく。


釘は刺せたようだし、旭は十分役目を果たせた。


杉本組の若頭代行補佐としての役目を——。