旭と杏奈の関係が気になっていた真紘を察してか、タケウチが2人のことについて知っていることを話してくれた。


旭と杏奈が出会ったのは、まだ将也が生きていた頃。


今から7年前のことだ。


家出した少年少女が集まることで有名な歌舞伎町のとある場所で、当時15歳だった杏奈は連日連夜そこに行っては、自分の体を売っていた。


そこで客の男性とトラブルになっていたところを、たまたま通りがかった若頭の将也と補佐の旭が助けたのがきっかけだった。


彼女は小学校もまともに行けなかったような劣悪な家庭環境で育った。


母親は暴力的な父の元に杏奈と妹を残し、早くに愛人を作って出て行ってしまったらしい。


まともに働かない父親に代わり、わずか13歳の子供が必死に調べて辿り着いた手段が売春だった。


しかし、稼いでも稼いでもお金は全て父親にとられるため、いつまで経っても貧しさは変わらない。


そんな彼女の状況を聞いた将也は、タケウチが経営する風俗店で働けるように斡旋(あっせん)した。


「詳しくは知らんけど、杏奈がウチに慣れてきた頃、週に3回くらいかな?旭が店のバックヤードで杏奈に勉強教えてやってたんだよ。アイツも若頭補佐として忙しくなって、そのうち将也も逝っちまって、いつの間にかやらなくなったけどな」


一連の説明を聞いて真紘は諸々納得がいった。


旭にも妹がいるため、杏奈を見ているとそれを思い出して重ねているのかもしれない。


でもきっと、彼女の方は、旭を単なる〝お兄ちゃん〟とは思ってなさそうだ——。