旭から聞いていた通り、診療所に来る人間は本当に多種多様だった。


前に真紘たちが亮太を連れて行ったように、銃創などを負って連れ込まれる人もいれば、お悩み相談のように話をしに来て薬をもらって帰るだけの人もいる。


何回かシフトに入っただけで、真紘は人々にとってここがいかに必要とされている場所なのかがよく分かった。


だいたい診療所は夕方16:00くらいに開けて、翌朝は遅くとも6:00くらいに閉めることが多い。


ひっきりなしに人が訪れる夜もあれば、全く人がやってくる気配がない夜もある。


そんな時は少し早めに切り上げて、先生と一緒に朝からやっている牛丼屋さんで朝ごはんを食べてから家に帰ったりする。


今日は比較的落ち着いた後者の日で、診療開始してすぐにたこ焼きを差し入れに来てくれた旭と3人でまったり過ごしていた。


「どうも先生。実は店の子の相談なんですけど……」


今日最初の患者は、タケウチという男に連れられて来た、少女にも見える女性だった。


タケウチは渋谷の風俗店のオーナーで、一緒にいるのはお店の女の子らしい。


真紘以外はみんな知り合いのようだった。


「実は火傷の痕があるらしくて、診てやってほしいんです」


タケウチさんがそう言うと、先生に目配せされて真紘は彼女を隣の処置室へ連れて行った。