旭が、綾人と会うと言って出かける真紘に念のためついて行くと、2人は有名なホテルの中に入って行った。


2人が会う頻度は限られているし、きっと近況や式のことなど話すことはたくさんあっただろう。


改札での別れ際には、人目も気にせずまるで今生の別れのような熱いハグまで交わし、それを見せつけるかのように綾人は旭の方を見てきた。


さぞかし楽しい時間を過ごしたんだろうと思っていたのに、真紘はなぜか泣き腫らした目をしていた。


外にいた時は遠くでよく見えなかったが、家に戻って来たら、涙の跡がはっきりと分かる。


一体何があったのか聞いて良いものか、それとも触れない方がいいのか。


旭が考えあぐねていると、真紘の方から話し始めた。


「……私ね、綾人と別れたんだ」


「はぁっ!?なんでだよ……!」


それは旭にとって思いもよらない報告で、思わず大声をあげてしまった。


「やっぱり私は旭のことが好きだから……だから別れた」


旭は目を閉じて眉間を押さえた。


もしかしてとは思っていたのだ。


でもそれはきっと自分の願望があるからそう思うだけだと言い聞かせていたのに……。


「……悪いけど、俺はもう真紘にそういう気持ちは残ってないから」


これが旭の精一杯の回答だった。