もうここらで目が覚めてくれれば良いのだが、なぜかいつもそうはいかず。


必ず最後にはあの日の映像が流れるのだった——。


おかしいと思ったのだ。


何の言葉もなく、将也から突然送られて来た位置情報。


何か起きていることはすぐに分かった。


「将也さんッ!!」


廃墟ビルを1フロアずつ、部屋も全て見て回って確認しても、将也どころか人の気配すら感じない。


「ハァッハァッ……将也さんっ!!」


行き着いた屋上で、ようやく倒れている将也を発見した。


「まさ、やさッ………」


血の水溜まりに冷たい体、血色の悪い乾いた唇に止まった心臓。


彼は既に亡くなっていた——。


彼の血がべっとり付いた自分の手のひらを呆然と眺めながら、旭は膝をついてその場に座り込んだ……。


第一発見者であった旭は被疑者として取り調べを受けたが、もちろんこれと言った証拠もなく。


結局これは事件ではなく事故、つまり将也の自殺として処理された。


「良かったな、証拠不十分で」


故人を悼む様子もなく、葬式で嘲笑いながら話しかけてきた晃の顔を見て、犯人は絶対にコイツだと旭は確信した。


だからこそ旭は組長にこう直談判した。


『将也さんは絶対に自死するような人じゃない。犯人は絶対にこの組にいます。どうか俺をこのまま若頭補佐でいさせてください』


『面白いことを言うわ。わしのこの組の中に警察が自殺と判断した将也を殺した犯人がいると?いいだろう、好きにしろ。ただし、もし警察の出した結果通りだった時は、この組を侮辱した責任はとってもらうぞ』


睨みを効かせた組長に、旭はただ頭を下げたのだった。