「何も気にしなくていい!早くアニキに電話をッ……くッ……」


「そうだ、コイツの言うとおりだぞ〜?」


亮太の頭をグリグリと踏みつける様子に真紘は唇を噛み締めた。


自分がどうなろうと、絶対に屈したくない——!


真紘は目を閉じて自分が撃たれる覚悟で押し黙った。


パァァーーン


何かが破裂するような音が部屋いっぱいに響き渡る。


これが銃声だということはすぐに分かったが、真紘にはいつまで経っても痛みが訪れない。


真紘がそっと目を開けると、代わりに撃たれたのは亮太で、彼の脚からは血が流れていた。


「お前のせいでアイツの死期が早まったな」


彼を撃った張本人は真紘の後ろでケラケラと嬉しそうに笑った。


「分かった、分かったから!連絡するからスマホ返して!彼に乱暴なことはしないでッ!!」


「次は頭だ」と男が亮太の頭部に銃を構えた時、男に奪われていた真紘のスマホが鳴る。


「お〜噂をすれば」


画面には〝旭〟の文字。


男はスピーカーにしてスマホを真紘の顔の前に向けた。


「もしもしッ……」


そんなつもりはないのに、真紘は声が震えてしまう。


『大丈夫、すぐ行くから。場所分かるか?』


真紘の恐怖が伝わったのか、旭はいつも以上に優しく言葉をかけた。


旭の声を聞けただけで緊張が解れ、涙が出そうになる。


「よぉ織部。場所は日の出埠頭だ。会いたきゃ早く来てやれよ?男の方はいつまでもつかわかんねぇけどな。女の方は、まぁ殺しはしねぇ」


男は言うだけ言って電話を切った。


「良かったな?来てくれるってよ」


男は真紘の顎を掴んで不敵な笑みを浮かべた——。