当時真紘には高校1年生から付き合っていた同い年の彼氏がいて、結婚の話なんかもしてしまうほどにはラブラブだったと思っていた。


これからもずっと一緒にいられるものだと信じて疑わなかったのに、卒業式が終わってすぐ、彼は突然何も言わずに姿を消した。


携帯は解約されていて連絡が取れず、彼の家ももぬけの殻。


彼の行方を知っている人もいなかった……。


せめて何か言ってほしかった。


一緒に過ごしたあの時間、伝えてくれたあの言葉。


あれらは全て偽りだったの……?


あの時は涙が枯れるまで泣き、それからもあまりの喪失感に、しばらくまともな精神状態ではなかった。


さすがに10年経った今はもう、彼に未練などもちろんない。


ただ、どうしてあんな形で縁を切られたのか、それだけは気になっていて今も心の中に引っかかっている。


そして時折彼のことを思い出す。


着替えが終わって外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。


後輩と別れて駅に向かいながら、星がまばらに輝く夜空を見上げた。


彼も今、この空を見ているのだろうか?


そもそも、この世にいるのかもわからない。


(あさひ)、あなたは今どこにいて、何をしているの——?