バタバタと大勢が広間に走って来る音がして、広間の障子が一斉に開かれる。


「全員動くな!警察だ!」


掛け声と同時にシールドを持った警察が突入し、その場は大乱戦となった。


警察と組員があちこちで入り乱れる中、旭は間を進んで真紘の元へ向かおうとする。


「旭ッ!」


真紘は旭に向かって手を伸ばす。


それに気づいた晃は真紘の首元にナイフを当て、裏庭の方へ引っ張っていく。


しかし、晃が裏庭に辿り着くとそこには既に綾人らが張り込んでいた。


「来んじゃねぇぞ?少しでも動けば、この女も兄貴と同じようになるからな!?」


さすがの晃も想定外の展開に気が動転したのか、それとも諦めたのか。


晃は自らの口で、兄・将也の死に関与したことを口走っていた。


「証拠も揃った!どの道お前はもう終わりだ!いいから彼女を離せ!!」


綾人が叫びながら一歩足を踏み出すと、真紘の喉元に当てられたナイフの刃が少し食い込み、ツーと血が流れる。


真紘は取り乱すことなく、ただじっと呼吸を整えることだけに専念していた。


「俺は捕まらねぇ!証拠なんて適当なこと言ってんじゃねーぞサツごときがァッ!」



——私はここで死ぬのかもしれない


真紘は自分の死を悟り、最後にもう一度旭の顔を見ようと目で彼を探していると、晃の母親が警察に連れられて裏庭の勝手口に向かうのが見えた。


おそらく晃もそれが見えたのか、少しだけ真紘の喉元のナイフが緩められた。


「母さん……」


母親は立ち止まって晃の方を見て「役立たず」と、それだけ呟き、抵抗もせず警察と共に行ってしまった。


その場にいた全員が唖然とする。