「最近よくどこかに出かけてますね」


晃を乗せた車の中で、旭は白々しく尋ねた。
本当は知っている。


彼が定期的に下町の方へ行き、何かしていることを。


しかし、そんな時は大抵旭は何か別の仕事を振られていて、晃が何をしているのかははっきり掴めずにいた。


「いちいちお前に話す必要があるか?」


「……どこの組も動きが活発なんで、1人で出歩くのは危険です。俺が嫌なら別のやつでもいいんで、これからは必ず誰かを連れて行ってください」


「……そういうお前は、最近やけに補佐らしいこと言うようになったなァ」


晃は鼻で笑った。


旭が自分を探っていることはわかっている。


だからこそ、旭と彼に懐いている亮太のことは、極力自分から遠ざけていた。


「今までちょっと自覚が足りなかったなって俺なりに反省したんですよ」


ルームミラー越しに旭と晃は鋭い視線を交わす。


車内では腹の探り合いの緊迫した空気が流れていた。


晃お気に入りのホステスたちを途中でピックアップして、旭たちは歌舞伎町のいつもの店に向かった。


「旭さん最近よく来てくれるから嬉しいなぁ」


さりげなく腕を絡ませ、体をぴったりとくっつけてくる女を愛想笑いであしらいながら、旭はふと周囲に目をやる。


少し離れた所に、真紘と綾人がいた。


——2人で何してんの?


そんなこと、同伴して店に行こうとしている今の自分が聞けるはずもなかった。


旭は晃が真紘たちに気づく前に隠すように背を向けて、早く店に入るよう促した。