あれから約10年——。


今では杉本組の若頭代行補佐として、旭はその名を轟かせている。


旭が真紘と会うのはもちろん卒業式以来だった。


大人っぽい服装に化粧をして、高校の頃とはパッと見の印象がまるで違った。


でも旭は、さっきの一瞬顔を見ただけで、声を聞いただけで、彼女が真紘だとすぐに分かった。


元気そうで良かった——。


これがまず一番の感想だった。


本当は他にも伝えたいことがあるし、謝りたいこともある。


聞きたいことだってたくさんある。


確か大学の看護学部に合格していたから、やはり今は看護師をしているのだろうか?


どこら辺に住んでる?


休みの日は何してる?


そして、今恋人はいる……?


最後の質問はさすがにキモいか、と自嘲する。


真紘と連絡を取る術もないわけだが、なんとなく、彼女は明日またこの歌舞伎町に来るような気がしていた。