「………は?アリス?」
「…………?奥様?」
「…………お嬢?」
「「「「………はぁ⁈」」」」

クロードをはじめとする周囲の、驚きの声が重なる。
しかしアリスは「ふふっ」と小さく笑うと、左手をタロの頭に置いたまま自分のお腹に右手をやった。
クロードは慌ててタロを自分の方に引き寄せると、
「貴女って人は!どうして今このタイミングでそんなこと言うんだ!」
と叫んだ。
「だってクロードの驚く顔が見たかったんだもの」
悪びれもせず微笑むアリスに、クロードはため息をつく。

「それに、わかったのはサンフォース領に入ってからなの。妊娠がわかったら、きっと結婚式を取りやめるって言い出したでしょ?クロード」
「当たり前だろ?」
「でもお腹の子も私もピンピンしてるもの。結果オーライで許して」

「お腹の子…」
クロードは感慨深げに呟くと、タロをフェリシーに渡し、そっとアリスのお腹に手を当てた。
「ここに、貴女と俺の子が…?」
「ふふ、そうよパパ、よろしくね。でもとりあえず今は領民の皆さんの祝福に応えなきゃ!」

「パパ…」
ジーン…と効果音まで聞こえてきそうなほど感動に打ち震えているクロードを尻目に、アリスは見学者に溢れんばかりの笑顔を見せて手を振っている。

「…先が思いやられますね…」
「あれ、絶対一生お嬢に振り回されるよな」
「まぁ、尻に敷かれるのは確定でしょう」