Twinkleな彼は、【完】




『山川さんは女性のどういうところに、キュンと来ますか?』


自分の部屋にある液晶テレビの中、微笑むリポーターの女の人。


『そうですねー、やっぱり定番ですけど無邪気に笑ってる姿とか可愛いですよね』


キラッと効果音が付きそうなほど完璧に笑う彼は、あまりにも眩しい。


『聞きましたか、ファンのみなさん!無邪気に笑いましょう!』


そうテレビの向こう側に向かって訴えかけてくるリポーターの人。




液晶画面に映る彼は、


山川樹(やまかわ いつき)20歳
大人気5人グループ、Sole(ソーレ)のセンターをつとめる人物。



街を歩けば彼らの広告がそこらじゅうにあるし、SNSを見ればSole関連の動画や話題が自然と目に入って来る。


テレビで見ない日はないほどの、大人気グループ



へー、無邪気な笑顔が好きなんだぁ



そんなこと初めて聞いた



真剣にテレビを見ながらそんなことを考えていると、部屋の窓の向こう側の電気がパッと明かりがついたのが分かった。



あ、帰ってきた!



急いで立ち上がって、自分の部屋の窓を開けて、さらに向こう側にある窓も開けると見えてくる整理整頓された部屋と、驚いている綺麗な顔。



今日も超絶かっこいい。きっと人類で一番!



もはや人類を飛び越えて神なんじゃないかと思うくらい。



「樹!おかえり!」



窓から身を乗り出してそういう。



「うわっ!びっくりした」



さっきまでテレビで微笑んでいた彼は、不機嫌に顔を歪める。



窓枠に収まる彼の姿はCDジャケットの写真かと思うほど絵になる



そう大人気アイドル、山川樹は私の幼馴染


私、水野はな(みずのはな)は大学に通うごく普通の20歳。大学ニ年生!大学生になってから、初めて染めたオリーブ色のミディアムヘアーがお気に入りです!


樹とは物心ついた時からずっと一緒にいるお隣さんで、兄弟みたいに育った。



昔からすれ違う人が二度見するほど群を抜いて顔がいい樹は、ずっと習っていたダンスを武器に中学に上がると同時に芸能活動を開始。



気がつけば樹は人気になっていく一方で、高校三年生の冬、樹はついにアイドルグループSoleとしてデビュー


デビューと同時に連続ドラマで主演を見事に演じきり、一気にブレイク。


今もその人気は止まることを知らない。





「…つかノックしろっていつも言ってんだろ」



「あ、ごめんごめん!」


いつも忘れちゃうんだよね。こうやって怒られちゃうのもいつものこと。



「思ってねえだろ」


着替えとかしてたらどーすんだよ、って。



「久しぶりに会えたのが嬉しくて!」



だって、3週間ぶりとか?忙しいのはわかるけどさ。会えなくて寂しかったんだもん!


「っ、たく…」


って、呆れた様子。


ぱっちりした黒目がちな二重の目、笑えば浮かび上がるぷっくりした涙ぶくろ、高くてシンボルのような鼻、大きくて形のいい口、血色のいい唇、綺麗な歯並び、男らしい少しごつっとした輪郭、艶々な肌。


男らしい逞しい筋肉、ハスキーな声。


筋肉はねダンスしてたら勝手についちゃうんだって。


掠れたセクシーな歌声とキレのあるパワフルなダンス、笑うとくしゃっとなって下がる目尻、愛想も良くて礼儀もきちんとしている。


バラエティに出れば天然で笑いを取り、パフォーマンスをすればみんなを魅了する。



キラキラした王子様のような笑顔から、セクシーな表情までナチュラルに使い分け女子を虜にする。



どの角度から見ても美しい。まさに少女漫画の世界から飛び出して来たような、存在。



…まあ、私には少し意地悪なんだけどね。



「あ、レジュメ溜まってるから渡すね!」



この1週間、樹大学来れてなかったもんね。



私と樹は同じ大学に通っている。



仕事が忙しい樹に変わって、単位の取りやすい授業、なるべく出席点のない授業、テストではなくレポート点のある授業を探して選択して、樹の履修登録まで私がしてる。


樹はそれをマネージャーさんに提出して、なるべく仕事の量や時間を調節。


それでもどうしようもない時も多いから、仕事で忙しい樹をカバーできるよう、全く同じ授業を選択してる私たち。



樹が出れない授業があれば私がレジュメを取ってきたり、出た課題を報告してる。



これは樹が芸能界に入った時からずっと続けていること。



大人気アイドルの樹が大学に通っているのは校内で有名な話で、大学に来るとみんな騒ぎ出す。


私は学内で会っても、講義室で会っても他人のふりをしろって樹から口酸っぱく言われてる。



私たちが幼馴染であることは、絶対秘密、らしい。


幼稚園からずっと同じ学校に通う私たちだけど、そう言われたのは高校の時から。


だから高校の同級生もみんな私たちが幼馴染だって知らないんだよね。先生は知ってるからお願いして、3年間同じクラスにしてもらったこともあった。



私は自慢の幼馴染だから言いふらしたいのに…



自分のカバンからレジュメを取って、樹の部屋に移るため、精一杯足を伸ばして、窓を跨ぐ。



「よいっしょ」


なんとか窓に足をかけた私は、樹の部屋へなだれ込む