部屋の扉を、高橋さんが私を抱っこしたまま片手で開けると、そのままベッドに寝かせてくれた。
「おやすみ。 いい子に」
チュッ。
左頬に高橋さんはキスをしてくれると、そのまま電気を消して部屋から直ぐに出て行ってしまった。
部屋の中を見渡すこと等、まったくなくて、改めて高橋さんの真面目な紳士らしい一面が垣間見られた。
偶に、少しエッチな所もあるんだけれど、やっぱり高橋さんはジェントルマンで、そんなところが昔から大好きだったりもする。
ハッ!
ベッドに横になりながら、にやけている自分に気づいて、誰も見ていないのに慌てて毛布を被った。
翌日は二日酔いもなく、直ぐに起きられたのだが、カーテンを開けると一面銀世界に変わっていた。
雪……。
外の景色を見た途端、ドアを開けて急いでキッチンに向かうと、高橋さんが既に起きていてコーヒーを入れてくれていた。
「高橋さん!」
「おはよう」
「あっ。 お、おはようございます」
「どうした? そんなに慌てて」
「雪! 雪が降っています」
「ああ。 今朝、カーテンを開けたら、随分と外が明るいなと思ったよ」
高橋さんは、別に驚いた様子もなく、至って普通だ。
「ま、まだ、降っているんですよ」
「そうみたいだな。 ちょっと、雪が止まないと出掛けられないかもな」
やっぱり……。
そうじゃないかと、思った。
きっと、この雪だと美術館巡りは出来ないんじゃないかなって。
「そんな分かりやすい、がっかりした顔をするな」
「いえ……そんなことは……」
「朝食が終わったら、直ぐ傍のスーパーに買い物に行ってみて、道路が大丈夫そうだったら出掛けよう」
「は、はい!」
「ハハッ……。 本当に、分かりやすい」
ホッとしながら朝食を食べ終え、直ぐ傍のスーパーに買い物に行ったが、行きよりも帰る頃はもっと雪が酷くなってきていた。
「寒かった……」
ホテルの部屋に戻った途端、思わず口に出して言ってしまった。
「ニューヨークの冬は、厳しい寒さだろ?」
「はい」
ある程度、覚悟はしていたが、これほどまで寒いとは思っていなかった。
「このままもっと降り出すと大変だから、食料も買ってきたことだし、暫く様子を見てからにしよう」