諦めきれないって……。
キャサリンという人と、高橋さんは何かあったのかな?
「それは冗談ですが、そろそろ高橋さんも身を固められたら如何ですか? 結婚とか、考えていらっしゃらないんですか?」
「結婚? そういうお前は、どうなんだよ。 これ、美味しいぞ。 食べてごらん」
け、結婚?
高橋さんは太田さんと話ながら、太田さんが持ってきたトレーにのっているトッピングクラッカーを差し出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
高橋さんが、結婚?
うわっ。
こんなに近くで、そんな会話を耳にするなんて思ってもみなかった。
キャサリンっていう人は、どういう人なんだろう?
高橋さんと、付き合っていたのかな?
「僕は結婚したくても、相手が居ませんから。 まず、そこから入らないと。 高橋さんはその気になれば、よりどりみどりですよね? 羨ましい。 でも、早く結婚した方がいいですよ。 海外に居る機会が多いと、色々ありますからね」
太田さんは、高橋さんにしきりに結婚を勧めている。
「俺は、いいよ」
高橋さん?
「何が、いいんですか? ああ。 もう敬語なんて、面倒だ」
エッ……。
「お前の方が上司だが、今は同期として言わせてもらう」
「ハハッ……。そんなこと、気にしてたのか? 堅苦しいのは、俺も好きじゃない」
「それを、早く言えって。 ああ。話が逸れた。 いったい、何がいいんだ? 今からそんなこと言ってて、どうする」
「俺は、いいんだ。 もう……」
何が、いいの?
高橋さん。
「結婚は、多分しないと思う」
嘘でしょう?
そ、そんな風に、考えているの?
結婚しないって……何故?
「何だよ。 その、諦めの境地は?」
「諦めの境地? そうかもしれないな。 しないというか、出来ないんじゃないか? 俺みたいなタイプは」
「そんなことは、ないだろ」
高橋さんは、何だか他人事のように言っている感じがする。
結婚しない。 出来ないって……それじゃ……。
ハッ!