相変わらず、高橋さんの周りにはたくさんの人が居て、やっぱり何処に行っても華のある人とは、こういう人をいうんだろうな。 高橋さんは、何処に行っても人気者だ。
そう思うと、さっきまで一緒にショッピングをしていた高橋さんが、今は遠い存在に感じる。
「大丈夫?」
日本語で話し掛けられたので、自然に前に立っている人を見上げると太田さんが立って居た。
「はい。 大丈夫です。 ちょっと、ご挨拶回りで疲れちゃって……」
「ハハッ……。 慣れないと、大変だよね。 僕も最初の頃は、本当に疲れたよ。 気疲れっていうのもあるしね」
太田さんが、隣の椅子に座った。
「君の上司も、もう直ぐ此処に来るよ」
「そうなんですか?」
「先に行って、矢島さんの相手をしていてくれと、さっき言われたから」
高橋さん。
そんなことを、太田さんに頼んでたんだ。
「相変わらず、高橋さんは優しいからな」
太田さんはグラスワインを飲みながら、向こうで談笑している高橋さんを見ていたが、暫くすると太田さんが言ったとおり、高橋さんもこちらに向かって歩いて来た。
あと、10メートル。
やっぱり遠目に見ても、高橋さんはタキシードがよく似合う。
上手く言い表し難いが、太田さんも決して似合わないわけではないけれど、高橋さんは着こなし方が他の人と何か違う。
周りの人に軽く会釈をしたり手を振ったりして、高橋さんがこちらに向かってきた。
あと、5メートルぐらい。
高橋さんと、目が合った。
少しだけ小首を傾げ、こちらに向かって微笑んでくれていたが、それを遮るように目の前に背の高い金髪の女性が現れてしまった。
「TAKA!」