「ああ。 まだ、家にもあるし。 お前は、どうする?」
私? 
私は……。
本当は、此処にあるもの全部買い占めたいくらいなんだけど。 まさか、そんなことを言ったら高橋さんに驚かれちゃうだろうし……
「あ、あの……私も、2本で」
「分かった」
「あっ! ま、待って下さい。 やっぱり、10本でお願いします」
「はあ?」
高橋さんが、目を見開いて驚いている。
「お前。 何、言ってるんだよ。 第一、お前は、このコロンは使ってないだろ? 10本も買って、どうする気だ?」
高橋さんに、呆れられてしまった。
だって、部屋のあちらこちらに置いて、高橋さんの香りに包まれたいんだもの。 でも、そんなことを言ったら、きっと高橋さんに馬鹿にされちゃうな。
「お前は、本当に馬鹿だよなぁ」
うっ。
悟られてしまったかしら?
恐る恐る、高橋さんの顔を見上げた。
「もしも、もしもだ。 俺が、香りを変えたらどうする?」
「えぇっ? そ、それは、困ります」
「だろ? なくなったら、また買えばいい。 幾らでも、まだ買いに来られるチャンスはある。 この出張が、最後なわけでもないんだから」
そうか。 
そうだよね。 また、出張に来た時に買えばいいんだ。
「そうですよね。 また、出張に来る機会もありますよね」
「ああ」
「分かりました。 じゃあ、5本にします」