「ごめんなさい……私……」
俯き加減に謝っていると、顎を持ち上げられた。
「心配させた罰」
「えっ?」
高橋さんの前髪が私の額に触れたと感じた途端、キスをされていた。
駄目……また涙が出てきちゃう。
こんなに心配してくれていたのに……それなのに私、1人で怒って、泣いて、馬鹿みたい。
初冬なのに、夕陽の暖かさと高橋さんの温もりで、心がぽかぽかしている。
普段なら、ゆっくりと沈んでいくように見える夕陽が、今に限っては早く感じてしまう。
ほんのり薫る、高橋さんの香り。
ああ、この香りに癒されて安心出来るんだ。
高橋さんと、夕陽をバックにキスをした。
此処はアメリカで、人目を憚らずにキスも出来る。
でも、やはり恥ずかしい。
高橋さんの唇がそっと離れ、自分の額を私の額につけた。
「もう、恥ずかしい」
「フッ……お前、顔まっ赤」
自分でも、そんなことぐらい分かっている。
「ゆ、夕陽のせいですよ」
恥ずかしくて高橋さんから離れて、思わず顔を両手で覆った。
高橋さんが全く動じていないのも悔しいけれど、今はそれ以上何も言えなかった。
「さあ、帰るぞ。 腹減った、俺」
「あっ! でも、ベーコンキッシュは忘れないで下さいね」
「本当に、お前はそういうことだけは忘れないのな」
うっ。
帰る途中、高橋さんが車を停めて、ベーコンキッシュを買ってきてくれた。
「いい匂い……」
後部座席に置かれた出来たてのキッシュのパイ生地と、ベーコンの匂いが鼻腔を刺激して、途端にお腹が空いてきた。
今日は、本当にいろいろあった1日だった。
翌日からは、仕事に追われる1週間となる。

ハイウェイを走って渋滞を潜り抜けて、New Yorkの事務所に向かう。
すると案の定、想像通り前回に同じく熱い抱擁の歓迎ぶりだった。
勿論、高橋さんのことである。
「TAKA、TAKA」と あちらこちらで熱いhugの連続。
そんな光景をまたもや目にして、いささか興ざめしながら見て見ぬふりをしている。
「前回とは違って、慣れたもんだね」
エッ……。