これで、高橋さんが待っていてくれる場所に辿りつける。
そう思ったら自然と足早になり、メインストリートに出た途端、高橋さんの姿が見えた。
居た! 
高橋さんの姿が見えた。
良かった……本当に。
不安だった気持ちが、高橋さんの姿が見えて安堵の気持ちに変わり、それと同時に泣きそうになって、小走りになりながら高橋さんに近づいて行く。
この時ほど、高橋さんに会いたいと思ったことはなかった。
エッ……何?
嘘でしょう?
信じられない。
何で?
私が、これだけ大変な思いをして1時間近くも迷子になって彷徨っていたというのに。 
それなのに、あろうことか、高橋さんは荷物を持ったまま呑気に本を読んでるなんて。
普通、戻ってくる時間があまりにも遅い場合、待っている身としたら……。
まだ戻って来ないけど、どうしたんだろう? 
何か、あったんじゃないだろうか? 等と、焦ってキョロキョロしたりして落ち着かないはずなのに。
高橋さんの態度に、緊張の糸がプツンと音を立てて切れた気がした。
どれだけ私が大変な思いをしていたか等、きっと知りもしないで……分かりもしないで……高橋さんは、呑気に読書。
そう思ったら無性に腹が立って来て、拳を握りしめながら高橋さんに近づいて行くと、気配を感じたのか高橋さんが読んでいた本から目を離して顔を上げた。
「私が……私がどんなに大変だったか。 迷子になっちゃって、どれだけ心細くて不安で泣きそうだったか……。 それなのに……高橋さんは、本なんか読んでいるなんて。 酷いです」
一気に捲し立てて高橋さんを睨むと、高橋さんは読んでいた本を閉じてバッグにしまった。
「帰るぞ」
エッ……。