「承知いたしました」
あっ……。
悩んでいると、高橋さんが決めてくれていた。
「いいだろ?」
「は、はい」
チキンとビーフと悩んでいたので、ちょうど良かった。
「お飲み物は、何になさいますか?」
「俺は、赤ワインとビールで。 あと……キウイタイムにしてみる?」
「はい」
あれ?
そう言えば、さっきのCAじゃない。 違う人だ。
たまたま、そうなのかな?
しかし、その後も選んだ食事を運んできてくれたCAも今の人で、さっきのコースターのCAは来なかった。
いろんなことが釈然としないままだったが、食事が運ばれてきたので取り敢えず食べることに集中して、さっきの件はまた後で聞こうと思い、高橋さんと違う献立にしたのでシェアしてもらっていた。
「お食事中、失礼致します」
エッ……。
誰、この人?
「私、当機の客室乗務員のチーフをさせて頂いております。阿部でございます」
な、何、この人。
何だか貫禄があって、偉い人みたい。
この人が、何で高橋さんのところに来たの?
「この度は、誠に申し訳ございません。 当機の乗務員が、お客様に大変失礼な行為を致しまして……」
阿部さんという人は、深々と高橋さんにお辞儀をした。
「謝るのなら、彼女に謝って下さい。 1番の被害者ですから」
な、何?
高橋さんの阿部さんに対するその言い方は、穏やかな口調ではあったが辛辣かつ冷淡なものだった。
「お客様、この度は当機の乗務員が大変失礼なことを致しまして、誠に申し訳ございませんでした」
「はぁ……」
何がなんだか訳が分からず、高橋さんの顔を見た。
「実は、前回も同じようなことがあったんですよ。 まったく、同じようなことをされまして……その為に、前回彼女は機内でずっと泣いていたんです。 もう思い出したくもないことなのに、また今回も同じようなことをされて良い思いはないはずです。 快適な空の旅とは、ほど遠い。 個々のモラルの問題だと思いますが、大事な部下に2度も不快な思いをさせられると、幾ら自社便でも敢えて他社便に回避したくなります」
「申し訳ございません」
大事な部下……。
「あまり事を荒立てたくはないが、ファースト、ビジネス等関係なく先ほど申し上げた個人のモラルというより我が社の問題だと判断し、だから今回敢えて貴女に来て頂いた」