「私、物凄く不安になっちゃって……なかなか高橋さんは戻ってこないし、トイレにしては長いから気分でも悪いのかなとか。 私と一緒に居たくないから、ラウンジにでも行っちゃったのかなとか。 いろいろ考えちゃって……」
話ながら、思っていることを自然に高橋さんにぶつけている自分にも驚いていた。
「ラウンジ?」
高橋さんが、顎に左手をあてて小首を傾げている。
「あの、よく画像とかで見ると、ソファーがUの字型みたいになってるところがありますよね?」
「ああ。 ソファーラウンジのことな。 あれは、航空会社や機種にもよるけど、普通はファーストにしか付いてないよ」
「そ、そうなんですか。 知らなかったです」
高橋さんが、笑っている。
「まあ、最近はそのスペースを有効活用して、フラットシートのスペースをより広くすることに変更している機種が多いが」
高橋さんは、温くなってしまっただろう、残っていたビールを一気に飲み干した。
やっぱり気になるから、さっき何処に行っていたのか聞いてみようかな?
「あの……」
「お食事は、どちらになさいますか?」
聞こうとしていたところに、CAが食事を運んできた。
「お肉は、チキンとビーフ、それから……先日リクエストして頂いておりましたカツサンドのご用意がございます。お魚は、スズキのムニエルでございます」
「俺は、チキンで。 何がいい?」
「私は……」
「じゃあ、悪いけどビーフにしてもらえますか? それと、カツサンドは次の食事の際に持ってきてもらえると有り難いのですが」