「だって、高橋さん。 テリトリーに立ち入らないでくれと言って、そのままさっき私に黙って……」
「ああ。 ちょうど、用事を思い出したから」
お願いだから、高橋さん。
その単語を並べたような言い方は、やめて欲しい。
もう、どうしてさっきはあんなこと……。
「ちょっと、待て。 最初から説明するから、泣くなよ?」
高橋さんは、飲みかけのビールを一口飲んだ。
「お前が知らなくてもいい世界だと、言ったのはな……」
高橋さんが、グラスを持ちながらこちらを見た。
「別にCAを庇うわけじゃないが、やっぱり手紙とか携帯とかの文章っていうのは、その人宛に書かれて来たものだから、それを他人に平気で見せるというのは、俺には気が引ける」
さっきのコースターのことだ。
「例えば、お前が俺にメールをくれたとしてだ。 それを、俺が平気で明良とかに見せていたら、やっぱりお前もいい気はしないだろう?」
それは……。
「俺にしたって、同じこと。 お前に俺が手紙を書いたとして、それをお前が他人に平気で見せていたとしたら、やっぱりいい気はしない。 それは、当人とその相手だけの世界であって、第三者は知らなくてもいい世界だろ? 別に、CAとの世界なんてないが」
そういうことだったんだ。
でも……。
「だとしたら、ちゃんとそう説明して下さればいいのに」
「ん?」