きっと高橋さんは、私が考えていることが分かるんだ。
「でも……」
高橋さんは、私の考えていることが分かるのに、私には高橋さんの考えていることが分からない。 
それどころか今回のように、分かりもしないで余計に煽って傷つけてしまったりする。 そんな私の存在って……。
「それでいいんだよ。 無理して息が詰まっても、肩が凝って疲れても、意味がないだろ?」
「でも……高橋さんは、今みたいに私の考えていることが分かるのに……。 それなのに、私には高橋さんが何を考えているのか、ちっとも分からなくて」
瞬きと共に涙が膝の上に零れ、そんな泣き顔の私の顎を高橋さんが左手で少し持ち上げて涙を拭ってくれた。
「俺は、今のままのお前で居て欲しいから」
エッ……。
高橋さんが私を抱きしめ、そのままソファーの背もたれに押しつけた。
「高……アンンッ……」
高橋さんが私の両手で私の頬を包んで、いきなりキスをした。
深い、深い……キス。
苦しくて、息が出来ない。
時折、それを察して高橋さんが少しだけ唇を離してくれるが、また直ぐに向きを変え、角度を変えながら長い深いキスを落としてくる。
先ほどの涙が、目尻を伝って流れていった。
「ンンッ……ンッ……」
駄目……とろけちゃいそう。
ついていくのがやっとだった唇が少しだけ離れ、高橋さんと見つめ合ったが、恥ずかしくて視線を逸らせてしまう。
「肝心な時に、寝やがって」
「えっ? なっ……アッ……ンンッ……」
私の言葉は高橋さんのキスによって阻まれ、また深いキスを落とされた。
嘘……。
何故?
何だか、高橋さん。
怒ってる?
先ほどよりも、更に激しいキス。
く、苦しい……。
息が出来ない……高橋さん。
そして、また少しだけ高橋さんの唇が離れる。
その繰り返し。
「出張、覚悟しとけよ」
「えっ? アッンンッ……」
何?
覚悟しとけよって……まさか?
嘘でしょう?
チュッ。
唇が離れたと思ったら、そのまま高橋さんは私の左目蓋にキスをした。
「ほら。メシにしよう」
エッ……。
高橋さんが、体を起こしてくれた。
「キャッ……」
立ち上がって手を離された途端、腰砕けのようになってヘナヘナと床に座り込んでしまった。
「フッ……。お前、面白い奴」
高橋さんは笑いながらダイニングテーブルの方に行きかけたが、床に転がってる私を見て歩みを止めると、私をまた起こしてくれた。
「お前。 今からこんなんじゃ、大変だぞ? 俺の相手は」
ヒッ!