高橋さんに、二日酔いなのがバレてる。
肩をすぼめながら高橋さんを恐る恐る見ると、高橋さんは悪戯っぽく笑っていた。
「そ、そうします。 はい。 すみません。 では、バスルームをお借りします」
慌ててゲストルームに戻って着替えを持つと、バスルームに逃げ込んだ。
「うわっ」
何気なく鏡を見て、卒倒しそうになってしまった。
髪の毛は、ボサボサ。
メイクがとれかけた、酷い顔。
みっともないし、女として恥ずかしい。
それこそ、干物女みたいじゃない。
好きな人の前で、わざわざ醜態晒しているようなもの。
醜態晒して……あれ?
このフレーズ、何処かで聞いた気がする。
誰かに、言われたのかな?
よく思い出せないけど、とにかく今はこのオヤジのような二日酔いの状態から早く抜け出したい。
酔いをさまそうと、少し熱めのシャワーを浴びて髪もドライヤーで乾かし、身だしなみを整えてリビングに戻った。
気を引き締めてリビングに戻ると、コーヒーのいい香りが漂っていて、さながら休日の朝といった雰囲気に、何だかとても幸せな気分になってしまった。
「蘇った?」
高橋さんが読んでいた新聞から目を離し、微笑みながらこちらを見ている。
「はい。 すみませんでした」
「朝食にしよう」
「はい」
急いで着替えを部屋に置いて戻って来ると、ダイニングテーブルの上にはすでに朝食の支度が出来て並べられている。
その光景を見て、驚きと共に自分が情けなくなってしまった。
私、何もしてないや……。
また、全部やってもらっちゃった。
「高橋さん」
「ん?」
ダイニングテーブルに座りながらコーヒーを飲んでいた高橋さんが、私の声にこちらを見た。
「私……」
言葉に詰まって俯きながら涙を堪えていると、そんな私の変化に気づいたのか、高橋さんが椅子から立ち上がってこちらに来てくれた。
「あの……」
すると、無言で手を引っ張って私をソファーに座らせると、その隣に高橋さんも座った。
「お前は、今のままでいいって言っただろ?」
エッ……。
ああ……。