◯陽夏の部屋
央士「……おい!」
陽夏(遠くの方から声がするような気がする……)
央士「おい!……起きろ!」
陽夏「ふにゃ?……お、央士君?」
央士「終わったぞ!……これからのこと話すからこい」
うたた寝してしまった陽夏を、央士は声をかけて起こす。
◯リビング
二人はリビングへと戻る。
いつも以上に綺麗になったリビング。
ピカピカに綺麗になったリビングを見て、央士の仕事ぶりに陽夏は感心する。
陽夏「……いつもより、綺麗になってる」
央士「ご飯も作っといたぞ、依頼された作り置きも」
陽夏「ご、ご飯も?……央士くんが作ったご飯を食べるってこと?」
央士「なんだよ、不満かよ?」
陽夏「……いや、そんなことは……」
陽夏(不満というより、王子ファンの子たちにバレたりしたら、大変な目に合いそうで怖い…)
陽夏「央士くん、そろそろなんで家政婦の仕事なんてやってるのか教えてもらっていい?」
央士「んなの、金のために決まってんだろ?」
陽夏「金のためって……ご両親は?」
央士「そこまでお前に言う義理はねーよ」
陽夏(……た、確かに)
央士「……まあ、俺は金持ちではなく、一般市民なわけよ」
陽夏「一般市民?!」
央士「そんなに驚くことか?」
陽夏「……だって、白蘭学園は、お金持ちしか通えないはず……」
央士「俺は白蘭学園一の頭脳の持ち主だぞ?特待生に決まってるだろ?」
陽夏「……央士くん、特待生なんだ、知らなかった……」
央士「言ってねぇからなー」
陽夏「なんで言わないの?凄いことなのに」
央士「特待生って言ったら、学費免除されてるのバレるだろ?俺にとっては『特待生』のブランド力より、白蘭学園に通ってるブランドの方が、得策なんだよ」
陽夏(……ん?央士くんが言ってることがよく分からない。……特待生としてじゃなくて、お金持ちとして、白蘭学園に通ってることにしたいのかな?)
不思議そうにする陽夏の顔を見て、「ふっ」っと軽く笑う央士。
央士「なんで特待生であることを隠してまで、俺が白蘭学園に通ってるのか、教えてやろうか?」
央士は悪戯に笑いながら陽夏の顔を覗き込む。
近くで見る央士の顔があまりにも綺麗で、陽夏は言葉が出てこなかった。
エリート金持ちの生徒ばかり通う白蘭学園。
その学園の中でも、人気者でみんなから『王子くん』と呼ばれている央士くん。
そんな彼の本性を知ってしまった。
陽夏(央士くんが特待生であることを隠して、白蘭学園に通う理由って……一体なに?!)
偽物王子の央士によって、平穏だった陽夏の学園生活が一変することを……この時はまだ知らない。