〇教室

 陽夏と央士は一緒に教室に戻る。
 先に戻っていた桜小路と目が合うが、気まずそうにすぐ視線を逸らされる。

 クラスメイトたちは、央士と一緒にいる陽夏に、怪訝そうな視線、好奇心に満ち溢れた視線、様々な視線を向ける。

陽夏(四軍の私が央士くんと一緒に戻ってきたから、めっちゃ見られるなあ……)


 視線をかいくぐり自分の席へと戻る。
 央士ファンから、背中に悪意ある視線を感じる。

 教室に気まずい空気が流れる中、教室ドアに人影が現れる。
 
 
徳川「百瀬さんってどの子ー?」

 ドアを開けて、教室に顔を出す生徒がいる。
 

陽夏「……私ですけど、」

徳川「あー、君が百瀬さん?」

 陽夏を呼んだのは、隣のクラスの徳川 朔(とくがわ さく)だった。
 中性的で綺麗な顔立ちの徳川は、央士ほどではないが女子からモテるので、クラスが違う陽夏も徳川のことを知っていた。

陽夏「そうですけど、えっと?」

徳川「ちょっと、話あるからきてー」

 そういうと、少し強引に陽夏の手を引いて教室を出ようとする。
 陽夏は咄嗟のことでされるがまま手を引かれる。


 
央士「待てよ、」

 左手を央士に掴まれて陽夏の足が止まる。

陽夏(……央士くん?……怒ってる?)

 央士は眉間にしわを寄せて顔が強張っていた。

徳川「あー、噂の王子くんやん!ちょっと、百瀬さん借りるなー?」

 徳川は気が抜けるような緩い口調で話す。

央士「だめだ、貸せねえよ。……陽夏は俺のだから、」


 生徒がたくさんいる教室で央士は言葉を発する。驚く発言をしたので、みんなの注目の的となる。

陽夏(俺のって……どういう意味?!)

 央士の行動と言葉に、教室にいた生徒たちはみんな驚き、それ以上に陽夏も驚いていた。
 陽夏は央士の言葉に心臓の鼓動が速く鳴るばかりだった。