木の上から落ちたのに全く痛くない体。なにかに受け止められたような感覚。

瞬時に状況を理解し、少年を抱いて慌ててその場から退いた。
あろうことか、ニーナは第二王子・ロルフの上に落ちたのだ。

「もっ、申し訳ありませんっ!」

 第二王子は服の土を払いながら立ち上がり、少年に目を向ける。

「……野良猫が二匹もいたとはな」

 ニーナはハッとして素早く少年にケガがないか確認するとこの場から逃げるように促す。

「ケガがなくてよかった。さあ、もう大丈夫よ。帰り方は分かる?」
「――うんっ」

 ニーナは少年の後ろ姿を見送り、改めてロルフに向き直った。

「大変失礼いたしました。私がどんな処分でもお受けいたします」

 恭しく頭を下げたニーナに男の視線が刺さる。
 つい先ほど、強制退場させられたというのに、まだ城内をうろつき、さらには木に登って王族の上に落ちたのだ。極悪と呼ばれるこの男からどんな罰が与えられるのか想像もできないが、この状況では受け入れるしかない。
 だが、男の口から出たのは予想外のことだった。

「あの少年は知り合いか」

 まさか、子供にまで手を出そうというのか。