パン屋さんで朝働いているとも聞きました。
 これにはアンリ様が驚いていて、「ルイスは朝が弱かったのに」なんて言っていました。
 リースは豊かな自然もあり、芸術の街だと聞きます。
 いつかは私たちもそちらに行ってもいいですか?

 アンリ様はルイスさんが旅に出た日から、「ルイスは一人で大丈夫だろうか」とばかりです。
 私が大丈夫だと言っても、全然聞いてくれないのです。
 でも何かあればすぐに連絡してくださいね!
 私かアンリ様がすぐに飛んでいきますから!
 
 それでは、またお手紙書きますね。
 あなたの夢がきっと、もっとたくさん叶いますように。
 
                   エリーヌ』

 彼は手紙をそっと閉じてもう一度封筒に入れると、大切に木の箱にその手紙をしまう。

「もう、お姉様も結局過保護なんだから……」

 たくさん入った手紙の束に、また一つ手紙が重なる。
 彼は大事そうにその手紙を出していくつか眺めながら、また箱にしまった。

 うんと背伸びをした彼は、まだ午前中の明るい空を見て微笑む。
 行き交う人並、レンガの街並みを眺めて思う。

「ああ、また描きたい」