「大丈夫? 熱い?」

「だいじょーぶ!」

盗み見ていたのがバレないように、慌てて香澄くんからタンブラーに視線を戻す。

「あちっ!」

「ほら、いわんこっちゃない」

見惚れて冷ますのを忘れたまま飲んだハーブティーは激熱だった。
少し中身をこぼしてしまった私に、香澄くんがハンカチを差し出してくれる。

それを受け取りながら、私は私が本当に情けなくなる。

「ごめん、ありがとう」

香澄くんは私のことどう思ってるんだろう。
家が近所で幼稚園に入る前から友達で、今もずっと一緒にいる。
いろいろ世話を焼いてくれて、香澄くんの方が誕生日は遅いけど、妹みたいに思われてる?
それとも、血を提供してくれるだけの人間なのかな。

こんな風にお弁当作ってきてくれるのも、血の安定供給のために家畜にエサをやるような‥‥

香澄くんはそんなんじゃないって思うのに、物語のなかの冷酷な吸血鬼のイメージが私の足を引っ張る。

「いただきます」

それでも、私は香澄くんが作ってきてくれたお弁当を食べる。

私の血が香澄くんの栄養になるんだから、そこはちゃんとしなきゃ。
どういう意図であれ、香澄くんが作ってきてくれたんだから。

あと、単純に美味しいんだよね。
香澄くんのお弁当!

お礼にお弁当作り返したりもしたいけど、とても私の手料理食べさせられるレベルじゃないの!!

「美味しいです‥‥」

完敗です。

苦手なレバーとほうれん草も、食べれてしまう。
シンプルなメニューなのにこんなに美味しいって、本当に料理上手だと思う。

「どういたしまして」

香澄くんも同じメニューのお弁当を食べながら、ニコニコしている。

もしかしたら、貴重な血液源が逃げ出さないよい餌付けされているのかもしれない‥‥

でも、香澄くんに血を吸われて怖いと思ったことはない。
痛みはないし、すぐに終わるし、またにくらくらする時はあるけどトータルでも献血ぐらいしか吸ってないらしいし、全然平気だった。