「紗羅。なにしてんの」


「っ、理乃、えっと木から落ちちゃって動け、なくなりまして」

登校中だったから、いつも遅めの理乃が通りかかって。


えへへ、と笑う私をひょいって持ち上げておぶってくれた。



「へ、ちょっと、理乃!」


「いーから。保健室連れてく。歩けないだろ」

「っ、ありがとう……」


そのあと保健室に連れていってくれて。理乃は事情をたくさん聞いてきて、後先考えず行動するなって軽く怒られた。

こうやって理乃が助けてくれたのは、1度や2度じゃなかったはず。


だからこそ、私も理乃に迷惑をかけるんじゃなくて、助けられるようになりたいって思ってるんだよ……。


「迷惑なんて思ってないからいい。でも昔も言ったけど、後先考えずに1人で行動しないで。いつでも俺のこと呼んでいーから」

「そんな、理乃に迷惑に決まってるし」


こんなに私に巻き込まれて迷惑じゃないわけがないよ……。


「じゃあさ、紗羅が1人で行動して、こーされたらどーすんの?」


━━━一瞬何をされたのか分からなかった。


目の前には真剣な顔をした理乃の彫刻みたいな顔があって。黒い瞳に吸い込まれそうなんてバカなことを思ってしまう。