「しかし見るのは好きだが、綺麗なものを生み出すという作業は初めてだな。うまく作れるといいんだが」
「うまくできなくても、そこが味わいになるものですよ。問題なしです。それに、凌士さんは初めてじゃないですし」
「ガラス細工は未経験だぞ」

 あさひはかぶりを振って、背後の凌士を振り向く。

「如月の車は美しいです。凌士さんはとっくに生み出してま——」

 言葉ごと飲みこむようなキスをされた。頭が痺れ、声にならない声が鼻から抜ける。
 小さな水音の余韻を残して唇が離れ、凌士があさひの肩に頭をうずめた。
うなじにもキスを刻みつけられる。

「嬉しいことを言ってくれる。だが、あさひも生み出す側の一員であることを忘れるなよ」

 凌士の手があさひを包むようにして前に回り、やわらかな胸の上を不埒に這い始める。

「凌士さん、や、待って……帰らなくちゃ。明日も仕事ですよ」

 まだ木曜日だ。あさひは腰を浮かしたが、腹に回った腕によってあっさりとベッドに引き戻される。

「帰したくないな」
「っ……ダメですよ。お仕事は大事……っ」

 比べるつもりはないけれど、凌士の抱きかたはあさひがこれまで経験したことのないものなのだ。
 深く、重い。
 凌士の想いに心まで深々と貫かれるような感覚といえばいいだろうか。

 貪り尽くされて、その分だけ新しく与えられて。抱かれるたびに、自分が強制的に作り変えられていくような錯覚すら覚える。

 始まればたちまちのうちに溺れてしまって、誰にも言えないような、あられもない姿をさらすはめになる。

 あさひは熱く抱かれるたびに、自分でも知らなかった一面を引きずり出されていた。それが少し、怖い。